女性コンサルタントの頭ん中

業務コンサル会社に勤めて3年目 日々考えたことを書いてく

「成功の秘訣はなんですか」という質問ほど害があるものは無い

「成功の秘訣は?」「成功のコツは?」

何かで結果を出した人が、必ず聞かれる質問だと思う。

ビジネスであっても、ブログのアクセス数であっても、柔道の世界大会であっても、みんな同じ。

人は、どうすれば成功するのか知りたいし、成功する人たちは何かしら自分たちは知らない秘密の技を持っていると思ってる。

聞かれた方も、一生懸命考えて、たくさんの出来事やトライしたこと、失敗したこと、うまくいったことの中から、特に大事だったなぁと思うことを、時には思いつきで、時には熟考の末、答える。

そうして、「○○がうまくいった13の理由」みたいな記事や本が生まれる。

 

最近思うんです、

これほど害があることって、無い。

いや、もう少し正確に言うと、これほど受け取る側のリテラシーが求められることって無いな、と。誤った理解しか生まないなら却って無いほうがいいんじゃないかと。

 

手軽な成功を求める時代

前のエントリとも少し関連しますが、当然のことながら、表立った輝かしい成功の裏には、大抵凄まじい困難と苦悩と努力が隠れているものです。

なのに、そうした背景に注目するよりは、人は成功のエッセンスを欲しがります。一度生々しさを失った「型」になんて、大した意味は無いのに。「これはやるな」はある程度言えても「これをやれば成功する」なんて、そんな、型にはめ込めばうまくいくような世界なら、たくさんの人が成功しているはずです。

それでも、うまくいくエッセンスをたくさん吸収すれば、うまくいくような気がしてしまうのはなんなんでしょうね。お手軽時代・・・?

私の会社でも、どんなに結果を出したプロジェクトも、寝る暇を惜しんで働かなければいけない瞬間があったり、お客さんとぶつかって大変な思いをしたり、といったことが多かれ少なかれあります。そして、大変な思いをして得たdo's and don'tsは、エッセンスを抽出され、他のプロジェクトに展開できるように方法論として語られるようになります。

例えば、育成系のプロジェクトであれば、単にトレーニングだけではなく、OJT形式でやるのがよい、最後に明確なアウトプットをお客様に出していただくことを念頭に置いたほうがよい、などなど。最初は、「いや~こういうことがあって大変だったからOJT形式にせざるを得なかったんだよ」といった、温度が感じられる体験談だったものが、時間が経つにつれ生々しさを失い、「型」になっていきます。

型は受け継がれ、たくさんのプロジェクトに流用されます。昇華されるとフレームワーク、なんてかっこよさげな言われ方をすることもあります。

 

そうして「型にはめればうまくいく」と思ってしまう悲劇が生まれてしまいます。

(自省の意味もこめて)そういう考えでいると、当然惨めな感じで失敗します。で、おかしいな、型どおりにやっているのにな、なんて思ってしまう。

状況が変われば有効な策も変わる。そんな当たり前のことさえ気付かずに、なぜそれが有効なのかも理解しないまま型だけ使うなんて、思考停止にもほどがある。(と、今なら思える)

「成功の秘訣はなんですか?」なんて、物事簡単にうまくいくように思わせてしまうから、いい加減やめたほうがいいと思うんです。

 

人の成功体験から学ぶには追体験しかない

じゃあ成功した人から何かを得て少しでも成功に近づくことはできないのか?というと、やり方はあると思います。

一番良いのは、追体験することだと思っています。

やったことが無いことであれば、やってみること。語られている話が成功だけなら自分で失敗してみること、そうやって本で語られていることに、現実の生々しさを加えることで、初めて成功に近づけると思っています。

もしくは、擬似追体験させてくれるすばらしい創作物に出会うか。

そんな本、滅多にないんですけど。それに限りなく近いと感じたのが、南場智子さんの不恰好経営でした。

 

不格好経営―チームDeNAの挑戦
 

 信じられないほど生々しい失敗体験。恐らく、まだまだ全然語りつくせていないだろうけど、創業初期の話の凄まじさといったら。自分の置かれた境遇なんて一日中コタツの中でごろごろと同じレベルのぬくぬくさだと思ってしまうぐらい。

それに比べると成功に転じた話のウェイトは、その成功の大きさの割りに比較的少ない。本人も書いている通り、成功した話よりも、重ねてきた失敗をありのままに書いたほうが価値があると思ったそうですし、その通りだと思います。

 

あんまり努力したくないのか、失敗を極端に恐れているのか、どちらにせよ、スマートに、手軽に、エッセンス実践すれば成功できるんでしょ、なんてことあるわけないから、「成功の秘訣はなんですか?」系の質問が無くならないなら、受け取る側の情報活用リテラシーつけなきゃ、と思う次第です。